1月の下旬、私は一泊でインドのブッダガヤを訪ね、シュリ・シュリ・ラビ・シャンカール師とお目にかかる機会を得た。
シュリ・シュリは「聖なる人」という意味だそうで、ラビ・シャンカールがお名前。「The Art of Living」というヨーガと呼吸法を普及する団体の創立者で、現在のインドで最も影響力大きい精神的指導者だ。
2009年11月9日の世界的な経済誌フォーブズ(Forbes)誌でも、シュリシュリさんは「インドで最も力のある7人」の5位にランクされている。ちなみに同誌では、1位がソニア・ガンジー(国民会議派の政治リーダー)、2位がシン首相、4位がタタ自動車のタタ会長。
http://www.forbes.com/2009/11/09/gandhi-singh-tata-leadership-power-09-india_slide_6.html
シュリシュリさんは、インド各地だけでなく、世界145カ国に支部を持つ国連最大のNGO団体であるアート・オブ・リビングのリーダーとして、現代社会を生きる人々のスピリチュアルな面での救済に飛び回わり、私が訪ねた日も、ブッダガヤの近くの町で集会を開き、10万人の人々が参加した。
私は、シュリシュリさんの行く先々で、多くの人々がひざまずき両手を合わせ、シュリシュリさんに教えを請う姿を実際目にした。私はヨガも呼吸法もこの団体のこともよく知らないが、シュリシュリさんとお会いして、何とも言えない安らぎとオーラを感じたのも事実だ。
インドには、このような人々の崇拝を受ける偉大な精神的指導者が生まれる風土があるようだ。
私がシュリシュリさんとお会いしたかった理由は、全インドで尊敬を受ける精神的指導者と直に会ってみたいということもあるが、できればシュリシュリさんに日本とインドの各界各層の指導者や若者たちを、永続的につなぐ「かけはし」として協力をお願いしたかったのだ。
これから世界の繁栄の中心はアジアに移ってくる。また今後の中国の動きを各国が注意している中で、日印関係は極めて重要になる。私も杉並区長時代に、区内にある蓮光寺というお寺に、ガンジーに並ぶインド独立の英雄チャンドラ・ボースのご遺骨が安置されていることもあり、インドを何度か訪問し、杉並区とガンジー財団やボース研究所との関係を深めた。その結果、杉並区中央図書館の脇にはガンジー財団から贈られた、日本にはただ1体の大きなガンジー像が立ち、時々インドの方がお参りになっている。
日本とインドは、仏教や文化、さらに言語など多くの精神文化を共有しているが、これまでは「遠い国」というイメージが大きかった。現にブッダが悟りを開いたブッダガヤを訪ねる日本の仏教徒は、タイやベトナム、そしてチベットなどの仏教徒に比べて極端に少ない。
しかしインドでの「どこの国が好きか」という世論調査では、毎回日本が第1位であり、最近のインドの大きな発展ぶりを見る時、いずれ中国のそれを凌ぐことを予想させるものがある。またインドのデリーやムンバイ(旧ボンベイ)には、ANAやJALが直行便を飛ばしているので、もっと日本人がインドの今と歴史に目を向けてほしいと思う。
別れ際にシュリシュリさんは、「是非近いうちに、大きな災禍と悲劇を受けた東北の被災地を訪問して、祈りを捧げたい」と話された。