「自分たち職人は今や『絶滅危惧種』。あと10年もすれば日本だけにしかない技術を持つ職人たちは消えてしまうでしょうね」
11月3日に訪ねた埼玉にある「渓水」の社長の菅野敬一さんの言葉だ。確かに一見すると普通の町工場だが、ここでは独自の職人技術を活かした鞄や名刺入れなどを制作して、いまや「AERO CONCEPT(エアロコンセプト)」のブランドで世界中でブレイクしている会社だ。
なぜ「AERO(航空)」なのか。
菅野さんで三代目になるこの会社は、もともと東京の港区の精密金型を作る会社で、特に飛行機の座席などの内装の骨組みを制作する独自の高い技術を持っていたが、取引先の会社のトラブルなどで発注が減少する中、「こんなものがあったらいいな」という物を好きで作っているうちに、それらの製品が注目されてきたのだ。
暖かく柔らかい手触り。
かっこいい洗練された独自のデザイン。
使えば使うほどいい味の出るもの。
長く使うほど愛着が深まるもの。
持っているだけで気持ちがいいもの。
菅野さんの職人技による「作品」は、コンピューターや機械では達成できない、そんな境地を実現している。これこそ日本のものづくりの真骨頂で、これからの日本の生きる道を示しているはずだ。
だが、菅野さんのような職人は、大量生産のみを指向する今の経済社会からはどんどんはじき出され、根気とやる気の必要な職人の後継者となろうとする若者もほとんどいないのが現状だ。
「時間おくれにならないうちに、『絶滅危惧種』の職人たちと『エアロコンセプト王国』をつくろうと思っている」
菅野さんの夢が叶ってほしいし、そんな日本にしないといけないと痛感した。
私の購入したAERO CONCEPTの名刺入れと、菅野さんの職人技で作られる名刺入れの部品たち