ワシントンを訪問してきました。(写真はダニエル・イノウエ上院議員)
毎年、様々な政治家や政策担当者と意見交換を続けてきています。なぜなら、日本の国益のためにも米国はいまだ大事な国であり、昨今はとりわけ中国マネーや人脈の影響をワシントンが受けやすいと感じているので、日本の主張を何とか言い続けなければと考えているからです。
さて、ワシントンで米国の政策担当者たちの関心事は、貿易についてはTPP(環太平洋経済協定)より韓国とのFTA(自由貿易協定)にあります。日本で考えられているような、「米国の押しつけ」という印象はありませんでした。FTAも物やサービスの関税を相互に撤廃していこうとする取り決めで、韓国は昨年、EU(ヨーロッパ共同体)とFTAを結び、今度は米国との締結を進めています。
実はこんな話を聞きました。昨年韓国とEUでFTAが締結されると、韓国内でオレンジジュースを製造していたコカコーラが、オレンジの輸入をこれまでの米国フロリダ産から、FTAで関税がゼロとなったスペイン産に変えてしまって、フロリダのオレンジ産業が打撃を受けることになったというのです。それで米国は大慌て。
ところで、同じように米韓のFTAが成立すれば、米国向けの韓国製家電や自動車の関税がゼロとなり、米国での日本の製品の競争力が弱くなり、ますます売れなくなるだろうと予想されます。私たちにとっては、米韓FTAは他人事ではないのです。
TPPに対しては、農業分野や法曹などのサービス分野まで、かなり強い反対があることも承知しています。またわが国が受けるであろうメリットについても、いろいろな意見があることも知っています。
しかし自由貿易圏を広げようという流れは、もはや止めることのできない世界の潮流になってきていることも事実で、もし日本がこの流れに乗ることをためらい続ければ、日本の国際競争力はどんどん低下し、その結果税収が減って年金や医療財政が破綻するだけでなく、充実を求められている防衛力も弱体化して、他国の侮りや侵略を受けることになりかねません。
物やサービスを世界に売って豊かになった日本には、自由貿易の先頭に立つことしか繁栄の道がないことを知るべきです。TPPについても、参加条件をあれこれつけてしぶれば、当初の参加国でルールが決められかねず、日本は不利益な条件でしぶしぶあとから参加せざるを得なくなるでしょう。
私は、まずはTPPへの参加を表明した上で、参加表明国で徹底的にルールづくりの議論をし、まさに日本主導でルールづくりを進めるくらいでなければならないと考えます。日本にとってのコメなどの困難な分野は、どこの国も抱えています。例えば米国では自動車産業界やオレンジや砂糖業界は、基本的にTPPに反対です。だから原則参加して、中でどんどん交渉する余地はあるのです。また仮に日本の意見がまるで反映されないことがあれば、その時に脱退するか否かを判断すればいいと思います。