わが国は長い歴史を通して、国の象徴たる天皇のもと、豊かな文明を築き上げてきた。
先祖を敬い、家族を大切にし、
自然を畏(おそ)れ、清く明るく正しく直(なお)い心を重んじた先人たちの歩みにより、
日本ならではの自然観、倫理観、宗教観が形づくられてきた。
また、古より「言霊(ことだま)の幸(さきわ)う国」と語り継がれてきたことが示すように、
豊かな言葉と感性によって多様で優れた文化芸術が生み出され、守り伝えられてきた。
さらにわが国は、諸外国の優れた文物を積極的に受け入れ、
広く世界の衆知(しゅうち)を集めることにより、
つねに自らを高める努力を積み重ねてきた。
わたしたちの願いは、
この歴史と文明を受け継ぐものとして、
物心両面で豊かな国を築き、
自らの知恵と力でこれを守り、
美しく豊かで平和な日本を幾久(いくひさ)しく次代へ受け渡し、
そして、この日本の力を世界の安寧(あんねい)のために役立てていくことにある。
わたしたちは「ひとの幸(さきわ)う国」をめざす。
わが国の力の源は、ここに住まう「ひとの力」にこそあった。
道義が栄え、教育が栄え、諸々の技芸が栄え、智恵が豊かにあふれる国。
人びとが自由のうちに自らの天分を追求し、実現させていくことができる国。
万機を公論に決する民主主義の伝統を堅持し、
国民がお互いの知恵を持ち寄って進むべき道を切り拓いてゆく国。
それがわが国のあるべき姿である。
またわたしたちは、これらの諸価値を重んずる諸国民と手を携(たずさ)え、
より広く「ひとの幸(さきわ)う世界」をつくりあげることに貢献していきたい。
わたしたちは「いのちの幸(さきわ)う国」をめざす。
日本人は、この豊かな自然の生きとし生けるものと
共に生きる精神を培(つちか)ってきた。
この叡智(えいち)を生かし、
わたしたち各々のいのちを相互に尊重するとともに、
かけがえのない地球のいのちを守っていくことこそ、
わたしたちの崇高なる使命である。
わたしたちは「和の幸(さきわ)う国」をめざす。
日本書紀がいまに伝える「憲法十七条」が、
「和(わ)を以(もつ)て貴(とうと)しとなす」の一文からはじまるように、
いにしえよりわたしたちは、「和」の精神を重んじてきた。
わたしたちは、これからも和を貴(たっと)ぶ国であることを誓い、
また、この精神のもと、和の先導者として
国際平和の実現に力を尽くすことを誓う。