2月7日(日)午前9時30分、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射しました。北朝鮮は1月6日に「水素爆弾の実験」と主張する第4次核実験を行なってもいます。
その一方、2月7日には中国人民銀行が1月末の中国の外貨準備高が昨年末から約995億(約12兆円)減ったと発表しました。ここにきて中国の外貨準備高は激減しつつあります。しかも「実態は発表よりも深刻ではないのか、中国経済のクラッシュも近いのではないか」とするエコノミストもますます増えています。
中国発の経済危機、北朝鮮の暴発、いずれも日本にとって極めて憂慮すべき事態です。かつての冷戦時代は米ソがそれぞれの手下を従えて睨みあいつつ、ただし大きな戦争は起こさない時代でした。しかし今や、19世紀型のバランス・オブ・パワーの時代に逆戻りしている観があります。ボスも不在、ルールも不在。それぞれが勝手な論理で勝手な国益を追求する時代になっています。
このように危機が膨らみつつある状況下では、「ほんの些細なこと」が危機を暴発させかねません。誤ったメッセージを送ると、それがふくらんだ風船を破裂させる「針」になりかねないのです。
1月24日に、那覇市若狭緑地に完成した「龍柱」の竣工式典が開かれました。『琉球新報』は「龍柱、友好へ海臨む」というタイトルの記事で報じたようですが、とんでもないことです。皆さんご存じのように、この「龍柱」は翁長雄志知事が那覇市長時代に推進したものです。「中国とのゆかりが深い歴史性を生かしたまちづくりを推進する」ために設置されたものだそうですが、「中国とのゆかり」とは、いかなるものなのでしょうか。
産経新聞が、昨年6月28日に「『4本爪』の龍柱を誰のために建てるのか?」と題する記事の中で、こんな興味深いことを書いています。
〈「龍」は元来、中国皇帝の権力の象徴。「5本爪」の龍の図柄は中国皇帝のみが使用でき、朝鮮など中国の冊封体制に入った周辺諸国は「4本爪」を用いてきた歴史がある。
琉球王朝も冊封を受け、首里城の龍柱は「4本爪」。そして今回の龍柱も「4本爪」だった〉
つまり、4本爪の龍は中国に「臣下の礼」をとったことの象徴だというのです。翁長氏が生かしたい歴史性とは、「中国の臣下になること」なのでしょうか。
しかも、この龍柱は莫大な費用をかけて建設されています。当初は1体5メートルの龍柱を1億2400万円で建造する予定だったものが、結果的にはなぜか高さ15メートル、予算2億6700万円のものを建てることになったとか。しかも、石材加工を中国に発注したために工期が遅れたために、国からの一括交付金の一部が受け取れなくなって、ほとんど那覇市の負担で建てなければならなくなった上に、最終的な総事業費は約3億3300万円にまでなったといいます。
3億ものお金をかけて、「臣下の礼」のシンボルを建てる必要があったのか、そのこと自体、見識を問われることですが、しかしより深刻なのは、このような「シンボル」が誤ったメッセージを送ってしまうことです。中国国内の危機の高まりという悪しきエネルギーが高まっている今、自らをそのエネルギーの「はけ口」として差し出すかのごとき誤解を招く行為は、厳に慎むべきなのですが。
翁長知事は、北朝鮮のミサイル発射に際しても、「県民の生命・財産を預かる知事として、心臓が凍る思いだ」と述べつつ、石垣、宮古両島に設置された地対空誘導弾パトリオットについて「いったい全体、どんな精度があるのか、素人には分からない」と懐疑的な見方を示したと報じられています。沖縄を守るべく派遣された部隊に対して沖縄県の政治の責任者が語る言葉としてはあまりに失礼ですし、沖縄県民の安全保障の危機を高めかねない無責任な発言です。
沖縄が地政学上の要であることは、誰も否定できない事実です。危機が高まりつつあるなかで、発すべきメッセージを誤ると、予想外の悲劇をもたらす可能性すらある。そのことはもっと真剣に考えられるべきでしょう。