沖縄・八重山日報にコラムを掲載しております。
八重山日報さんのご了承を得て、転載いたします。
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『沖縄と本土の「心の分断」に乗ってはいけない』
こんな歌があります。
「つばさ散り 操縦桿は折るゝとも 求めてやまじ 沖縄の海」
昭和20年6月22日、19歳の若さで沖縄に侵攻する米艦隊へ特攻して戦死された、三重県ご出身の浜田斎さん(陸軍航空隊第179振武隊)が遺書にのこされた一首です。たとえ愛機の翼や操縦桿が折れようとも、何としても沖縄へ行くんだ。その強い思いが、胸を打ちます。
よく、「特攻という非道な作戦に身を投じるなど狂気の沙汰だ」と断罪する人がいます。しかし、これほど特攻隊員をバカにした話はありません。特攻に参加した若者たちも、この特攻という「十死零生」の攻撃が、どれほどに常軌を逸したものかは痛いほどにわかっていたはずです。それでもなぜ、なお特攻に身を投じたのか。それは「沖縄を救おう、同胞を救わねば」と思っていたからではないでしょうか。圧倒的な米軍に侵攻され、当時の日本軍の力では通常の航空攻撃では撃墜されるばかりで効果が上がらない。ならば、特攻をしてでも救わねばならない。そう思って、その身を捧げられたはずです。そうでなければ、冒頭に掲げたような歌が生まれるはずがありません。そうして沖縄への航空特攻で、日本全国の3千余の若者たちが亡くなられました。
先日、摩文仁の平和祈念公園に足を運びました。沖縄守備隊第32軍司令官牛島満中将が自決された「沖縄戦終焉の地」です。沖縄には守備する日本軍将兵・軍属があわせて約10万人いましたが、戦死者は9万4千人余にのぼります。そのうち沖縄県外出身者がおよそ6万6千人であったといわれます。ですから、この平和祈念公園には、沖縄戦で散った日本全国32府県の慰霊碑が建立されています。
ところが、聞くところによると、沖縄の学校で、この場所に子供たちを連れてくるところは少ないのだといいます。ある方に、その理由を尋ねたら、こんな答えが返ってきました。「この祈念公園にある慰霊碑を見せると、『本土は沖縄を見捨てたのだ』と教えることができなくなってしまいますから」。
私はこの話を聞いて、本当に残念でなりませんでした。誰でも、「見捨てられた」などと教えられれば、多かれ少なかれ心に「しこり」が残るはずです。たしかに沖縄戦では、沖縄県民は多大な犠牲を強いられました。しかし、だからといって「見捨てられた」などと教える人は、沖縄のために散った約7万人の日本全国の若者たちのことをどう考えるのでしょうか。あまりに事実とかけ離れています。彼らに対するあまりの冒涜だとは思わないのでしょうか。
私はこの話は、大阪の機動隊員による「土人」発言と表裏をなしていると思えてなりません。もちろん、「土人」などという言葉が許されるはずがありません。しかし基地反対派は、若い機動隊員たちに我慢の限界を超える罵声を浴びせ続け、家族に危害を与えるかのような脅迫までして、売り言葉に買い言葉でつい汚い言葉を出してしまったら、鬼の首を取ったかのように喧伝する。それによって、沖縄と本土の分断を図ろうとするのです。これは「沖縄は見捨てられた」という嘘を教えて、沖縄の人びとの心をささくれ立たせるのと同じ手です。人の心を汚れた手でかき乱し、悪しき感情を煽り立てる、あまりに卑劣な手法といわざるをえません。
いまはウェブで検索をすると、反対派の暴力行為を記録した映像をすぐに見ることができます。国有地に反対派が無許可で建てた小屋を撤去するように伝えにきた職員を反対派が取り囲んで暴言を浴びせ、髪の毛を引っ張り、ひざまずかせている映像まであります。しかも、このような暴力行為が行なわれているのに、機動隊は遠巻きにして何もしない。文化大革命のころの中国では「革命無罪」などといわれ、紅衛兵の暴力がむしろ奨励されるような酷い状況でしたが、現状の沖縄は同様な「反基地無罪」の無法の地となってしまったかのごとくです。
しかも、「反基地無罪」の暴力行為を行なっているのは、多くが本土からやってきた政治活動家だといわれます。沖縄主要二紙がそれとタッグを組んで、沖縄県と本土を分断するかのような記事で煽り立て、「琉球独立論」などというほとんどの県民が望んでいないことを盛んに主張する。さらに一部の政治家がその運動に乗っかり、県民の心をかき乱すことで票を取ろうと躍起になっているのです。
沖縄県民は、こんな状況を許すのでしょうか。私は、これまで剛毅で心優しい文化を育んできた沖縄の方々が、こんな無法を許しつづけるはずがないと信じています。心ある沖縄の人びとは、いまこそ声を上げるべき時ではないでしょうか。そうでないと、取り返しのつかないことになりかねない。そこまで悪しき状況は進んでしまっています。