衆議院予算委員会 集中審議 山田宏の質疑応答全文
○山田(宏)委員
おはようございます。日本維新の会の山田宏でございます。まず総理、訪米御苦労さまでございました。私、二月八日に本委員会に立たせていただきまして、訪米前に、総理のTPPへの対応について、何点かお尋ねをいたしました。その中で、自民党の公約である聖域なき関税撤廃が前提でないと確認をされたならば、早期に交渉参加への決断をすべきだという視点でお話をさせていただきました。そのように会談もなって、そして共同声明発表されました。今いろいろ議論になりましたけれども、私は、国内にいろいろな不安がある中でこういったことが文字になったということは、成功だったと素直に評価したいと思っております。そういった中で、私は、やはり速やかに交渉に参加をしていくということが非常に重要だと思います。これは政府の決断一つでできることでありますので、やはりいろいろな御意見はあろうかと思いますけれども、早期の決断をお願いしたいと思うんです。
ここまでオバマ大統領と交渉をされて、文書にされたわけですから、ここで、いろいろ国内で相談した結果、交渉にはちょっと参加はできませんというようなことはあり得ないと思うんですけれども、その点、いかがでございましょうか。
○安倍内閣総理大臣
この会談の結果を受けて、アメリカ側はアメリカ国内において調整をしてまいりますし、既に参加を表明している国々との交渉もあるんだろうと思います。
私は、聖域なき関税撤廃ではないということを確認いたしましたので、持ち帰りまして党に対して説明をしていくという責任もございます。党においてさまざまな議論がなされておりまして、当然反対の議論もたくさんあります。そうしたことも踏まえて、国益にかなう道を選んでいきたいと思います。
今ここで、参加以外には道がないということを申し上げるつもりはもちろんありませんが、やはりよく党内の意見を聞いていくことも、私は自由民主党の総裁でもありますから、その責務であり、友党の公明党の御議論も拝聴したいと思っております。
○山田(宏)委員
この交渉は、これからの世界の自由貿易のルールのひな形になるような交渉事でございますので、なるべく早目に交渉に参加して、そしてそのルールづくりにきちっと入っていただき、その結果、これはだめだという場合もあるでしょうし国会が批准しない場合もあろうかと思いますけれども、どうかその点はお願いしたい、こういうふうに思っております。
もしこれで交渉に参加しないということになれば、かつてのトラスト・ミーと同じことになってしまうと思うんですね。ですから、そういった意味では、ぜひここは、早期に交渉に参加していくということが日本の国益につながる、リーダーとしての求心力につながるというふうに思っておりますので、ひとつお願いしたいと思っております。新聞紙上では、今回のTPP交渉参加、TPPに参加した場合の経済の評価について、先ほどもいろいろ御質問がありましたけれども、GDPを約三兆円好転させる、増加させるというような試算も政府にあるかのような報道がございました。こういった点については、全体としてはプラス、こう考えているんですけれども、農業にはまたマイナスもあろうか、こういうような御議論もあります。
私は、農業についてなんですけれども、関税七百何%を常に死守するという方針がいいのかどうか、これもやはり考えてほしいな、こう思っております。
やはり、農業は強くしていかなきゃならない、輸出産業にしていかなきゃいけない、成長産業にしていかなきゃいけないとなりますと、保護しているだけでは米産業は強くならない。やはり一定の競争の中で日本の米産業が世界に雄飛していくという戦略がなければならないと思うんです。
ですから、あくまでもこれは聖域で一歩たりとも譲らないということが本当に日本のためになるかどうか、その点はやはり大きな戦略的思考が私は必要だ、こう思っております。
いろいろ新聞を読んでおりますと、農業関係のさまざまな団体の方々やそういった被害を受けると想定されている方々から、一定の農業への配慮というものを求める声も上がっているように思います。
かつて、私も国会議員のときに、一九九三年にウルグアイ・ラウンド交渉が妥結して、米というものが関税化され、ミニマムアクセスというものが認められて、その後、ウルグアイ・ラウンド農業対策費として膨大な予算が計上されました。まず、このかつての自由化交渉の中から生まれてきたウルグアイ・ラウンド農業対策費というのは、いつからいつまででどれぐらいの額が使われたのかということを農水大臣にお聞きしたいと思います。
○林国務大臣
お答えいたします。
ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意関連対策、いわゆるUR対策ですが、同合意による国内農業への影響を緩和するために、事業費で六兆百億円、うち国費が二兆六千七百億円で実施をしております。事業実施期間は、平成七年度から十四年度までの八年間でございます。
○山田(宏)委員
この八年間で六兆百億円のお金が費やされたわけです。これも日本の農業を立て直してよくしていこうという意図でつくられたと認識をしておりますけれども、この予算が使われた八年間で、農業就業人口がどれぐらいに推移したのか、また、米の作付面積、平年収量というのがどれぐらい増加したのか、この点について、質問を事前にお話をしていると思うので、もしわかったら教えていただきたいと思います。
○林国務大臣
済みません、ちょっと正確に御質問を把握していなかったようでございますが、新規就農は、これは平成六年で六千三百人、平成十年には一万一千人と……(発言する者あり)新規就業青年ですね、この効果としては出ておるようでございますが、後でまとめて資料はお届けしたいと思います。
十二年の七月に中間評価というのをやっておりまして、稲作労働時間が六割短縮されるというような効果があるものもあった。しかし、例えば、担い手に農地の過半を集積するという目標、七十六万ヘクタールの目標と立てておったわけですが、これは四六%しか達成できなかったということで、非常に低い水準になっているというものもあるということを平成十二年の中間評価で既に行っているところでございます。
○山田(宏)委員
これだけのお金を八年間投じても、私の資料だと、農業従事者はその八年間で七百四十万人から五百六十万人まで減りました。
また、平年収量も一千百万トンから八百七十万トンまで減りました。結果としては、このウルグアイ・ラウンド対策費、農業対策費が六兆円も費やされたにもかかわらず、農業の発展というものにはほとんどつながらなかった。
いろいろな理由があると思うんです。
やはり、その中の理由の一つとして、この対策費は、ほとんど道路とか建物、箱物、そういったものに費やされて、農家の方々のレクリエーション施設とか温泉施設とか、または農業空港とかスーパー農道とか、こういったものにほとんどが費やされてしまって、農業そのものの競争力回復というものにはほとんど効果がなかったんじゃないか、こういう評価がありますけれども、農水大臣、どうでしょうか。
○林国務大臣
先ほど申し上げたような評価がある中で、一概に全て、例えば農業農村整備が効果がなかったということではないというふうに思っております。集約する効果とか労働時間が減ったとかですね。
ただ、当時は、今の状況と比べてみますと、例えば累次にわたって農地法の改正というのをやりまして、二十一年度が大きかったわけですが、平成の農地改革ということで、いろいろな主体の参入を認めております。そういうことがない中で当時やっていたという状況の違いもありますので、そういうことも加味しながら、対策というものがもし必要になれば打っていくということが考えられると思います。
○山田(宏)委員
農水大臣としてはそういうことを言わざるを得ないと思うんですけれども、総理、どうですか。このウルグアイ・ラウンドの対策費というのは、これだけのボリュームをかけた効果があったというふうにごらんになっていますか。
また、その反省というか評価のもとで、今後、このTPP交渉における中で、農業の問題も、やはり本当に農家の求めているもの、本当に農業の従事者が抱きたい希望というものとは、このウルグアイ・ラウンドの予算というのはほとんど何か、全部とは言わないまでも、そういう気持ちとは乖離したものではなかったかというふうに思いますけれども、いかがでございますか。
○安倍内閣総理大臣
当時、ウルグアイ・ラウンドに参加するかしないか、平成五年、私と山田さんは当選同期で、私は野党で、山田さんが与党という立場だったと思います。当時、我々は、自由民主党は反対の立場であったわけでございます。
しかし、この予算については、基本的にこれは、確かに圃場整備等も進めて集約化しやすい基盤はつくったとは思いますが、反省点も確かに、今委員の御指摘で、多々あったんだろうな、このようには思います。
そういう反省も含めながら、何が必要か。まさに農業が、若い人たちが自分たちの情熱や能力を生かすことができる分野である、こう思ってもらえるような分野にしていくために何が必要かということは、TPPとは別に常に考えていかなければいけないし、今こそ考えていくべきだろう、このように思っております。
○山田(宏)委員
やはり、これから農業対策というものが必要になってきたときに、これまでのやってきた結果、それは善意であったとも思います、しかし、やはりその効果についてはきちっと精査をして、本当に日本の米、農業が世界に雄飛できるようなそういう環境をつくっていく。それは補助だけではない。やはり一定の競争環境というものを工夫して入れる必要がある、私はそう思います。ですから、そういった視点でぜひ今後考えていっていただきたい、こう思います。
次に、日米同盟の問題は、単に経済だけではありません。同盟といえばやはり安全保障が基本的な柱になります。そこで、幾つかその点でお考えをお聞きしていきたいと思いますけれども、まず、その前に、尖閣の問題に入りたいと思います。
きょうの朝日新聞で、「中国船に追い回された」ということで、尖閣領海で、領海ですよ、魚釣島のすぐそばで操業していた二隻の鹿児島県の漁船が、二月四日、中国の公船によって日本の領海内で追い回されて、結局、操業ができずに離れたというような記事が載っておりました。
この事案は、当然、海上保安庁としては把握をされていると思うんですけれども、事実関係についてちょっと御報告をいただきたいと思います。場だ。こういういい漁場で日本の漁船が安心して操業できないということでいいのか、ぜひ安心した操業ができるようにしてほしいというようなコメントも出されておりました。この新聞では、「中国公船は一カイリまで接近してきた。威圧感があり、臨検を受けないか不安だった」という船長の証言もあります。
こういった事態というのは、昨今、たびたび起きている事態なんでしょうか。
○太田国務大臣
昨年の九月十一日以来、領海あるいは接続水域にかなりふえてきたという状況にございます。この二月ということからいきますと六件だと記憶しておりますけれども、そういう事態が起きた。六件、領海内に入ってきた、まあ六日ということ。
最近は、その回数だけでなくて、非常に長時間にわたるというのが大きな特徴でありまして、いずれにしても、領海の警備を海上保安庁としてしっかり今やっているという状況でございますし、今後もそう努めたいと思います。
○山田(宏)委員
昨今の中国は、こういった挑発的行為をどんどんエスカレートするばかりではないかという感じがするんですけれども、この中国側の狙いというものを日本側がどう捉えているのか、政府としてどう捉えているのか、一度お聞きをしておきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣
なかなかこの意図を推測するのは難しいところがあるわけでございますが、尖閣について言えば、これは一九七一年まで全く中国は主張していなかった。しかし、国連において尖閣の海域には相当大きな資源があるという発表がなされた後、中国は、自分の領土であるこう主張し始めたわけでございます。つまり、南シナ海での彼らの活動を見ている上においても、こうした資源に対する彼らの力による現状変更という動きがございます。
と同時に、残念ながら、中国はいわゆる反日教育をずっと進めてきている中においてそうした大きな世論があるのも事実でございまして、そういう中において、こうした挑発的行為をすることがいわばある種の支持を受けているということもあります。そして、ちょうど政権の移行期でありまして、まだ人事が全て行われていないという状況の中でこうしたことが起こっているということであります。
ここでやはり私たちがやるべきことは、しっかりと対話をしながら、かつエスカレートさせないということが極めて重要ではないかな、このように思います。しかし、前線で海上保安庁の諸君や自衛隊の諸君は本当に厳しい任務を実践しながらよく頑張っていただいいる、このように思います。
○山田(宏)委員
中国側のこれまでの尖閣周辺における動きというのは、現状を少しずつ変えていく事実の積み重ねをしている。つまり、この尖閣諸島周辺は中国の領土、領海であるということを少しずつ事実を積み重ねていっている、また、それがエスカレートしている、日本が黙っているとさらにまた半歩進んでくる、こういった事態だろうと思っております。つまり、中国の経済水域または中国の領海でやっているということを理由に、拿捕という手段もとり得るのではないかと思っております。これまで日本は、北方領土周辺においても、また李承晩ライン設定後の竹島周辺においても、相手国が日本の漁船を不当に拿捕していったということが数々積み重ねてまいりました。そういったことを考えておりますと、この尖閣周辺でも漁船の拿捕というのはもう現実性を帯びているのではないか、こう思っております。
海上保安庁が特にその点については矢面に立っていただいているわけでありますけれども、今後、私は、中国の情報をお聞きしますと、日本側のさまざまな対応を想定して、中国の公船だけではなく、中国海軍も加わったさまざまなシミュレーションを行っていると聞いております。
そうしますと、事によっては、拿捕が行われた場合、日本が、当然ながら海上保安庁の船が出てくる、そうすると、向こうの公船と極度の緊張関係にある。そういった中で遠回しに中国の海軍の軍艦が出てくる、今でも存在しているわけですが、そういった船が出てくると、今度は日本の海上自衛隊が関係してこなきゃいけないということになってきます。そういうことまで日本の場合は、拿捕だけではなくて、シミュレーションを海上保安庁と海上自衛隊できちっとやっておられるのかどうか、この点についてお聞きをしておきたいと思います。
○太田国務大臣
基本的にやっております。
海上保安庁が領海警備をする場合に、そうした自衛隊との連携というのは極めて大事だというふうに思っておりまして、それは常日ごろから共同訓練やあるいは通信訓練等を実施しているところでありまして、特に秘匿通信訓練ということで、自分たちだけでわかるという形での特に通信の連携ということについては、やっております。また、こうした緊密な連携のもとに共同訓練という形でやっていることも事実でございます。
○小野寺国務大臣
このような領海侵入事案につきましては、一義的には先ほどお話がありました海上保安庁の巡視船が実施をしておりますが、海上自衛隊としましては、平素より、P3Cにより、尖閣諸島を含む我が国周辺海域において警戒監視を行っております。
また、さまざまな情報につきまして、あるいは公船等の情報につきましても、無線等により、海上保安庁と速やかな連絡体制をとっております。
なお、御指摘がございました海保との共同訓練でありますが、平成十一年以降、通信訓練は毎年二百回以上、また、不審船への共同対処マニュアルというのを平成十一年の十二月に策定しておりますし、これに基づくさまざまな訓練ということを毎年のように基本的にはやっております。
○山田(宏)委員
ちょっとまだ質問していないことをお答えになっているので、次に共同訓練の話をしようと思っていたんです。
たしか、海上保安庁と海上自衛隊が尖閣のさまざまな事態を想定した共同訓練、きちっとオペレーションをして、そこの海域に出てやるということは一度もやっていないはずですよ。これまで海上自衛隊と海上保安庁がやってきた訓練というのは、北朝鮮の工作船をどうやって追い出すかというのはやっていますよ。しかし、尖閣のこの厳しい状況の中で、そういった訓練を行っていないんじゃないですか。
どうですか、防衛大臣。
○小野寺国務大臣
今御指摘がありました海上保安庁との共同訓練でありますが、これは不審船を含めた対応ということで、たまたま共同訓練を行っている場所というのが尖閣周辺ではありません
が、私どもとしましては、あらゆる事案に対応できるように柔軟性を持って訓練をさせていただいております。
○山田(宏)委員
これ以上やってもしようがないんですけれども、海上保安庁と海上自衛隊、なかなか組織の壁があります、警察と軍隊ですから。そういった意味では、やはり情報を瞬時にお互い共有していくという体制はもっと進めていかなきゃいけないと思うんです。
総理、これからこういった事態を想定しながら共同の訓練もする、それから、官邸の情報機能も、現在、制服が官邸の秘書官とかに入っていないですよね。やはりホワイトハウスなんかは、そういう人たちがちゃんと入ってきちっと専門的なアドバイスを大統領にしているわけですよ。日本の場合は、そういったものが、やはり間に何人か立っていて、それで総理ということになりますので、官邸の機能も、そういった制服組を何人か秘書官として加えてやっていく体制をやはりとるべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでございますか。
○安倍内閣総理大臣
ただいま山田委員から、必要な問題点、我々が検討しなければいけない必要な問題点について御指摘をいただいたと思います。
尖閣の対応においても、防衛省とそして海上保安庁がしっかりと共同して対応できるように、あるいは、共同して対応できるようなマニュアル、既にさまざまな、共同的な対応ができるような、訓練等も含めて、できておりますが、今後さらに、尖閣の事態に対応した、尖閣でその訓練をやるとは限りませんが、図上の演習についても含めて、これはちゃん検討していくべきであろう、このように思います。
そして、今後、NSCをつくっていく上において、当然、私は、制服の人たちに入ってきていただいてスタッフとして仕事をしていただくべきであろうと思っております。
○山田(宏)委員
私は、NSCの発足を待たず、いつ何が起きるかわかりませんので、そういった対応だけはぜひ早期にしていただきたい、こう考えております。
ちょっと、質問の時間が大分迫ってきたので、集団的自衛権に入りたいと思います。
先ほども何点かお話がありました。自分の国は自分で守るというのは当然の原則でありますが、今、全部自分の国で守れる国というのはアメリカ以外にないわけです。そういった中で、やはり同盟関係というものが自国の安全保障にとっては非常に大事です。その同盟関係という基本は、やはり個別的、集団的自衛権で成り立っているわけです。集団的自衛権というのは、自分が攻撃を受けたら相手が助ける、相手が攻撃を受けたら自分が助けるという当然の正当防衛です。
この固有の自衛権に属する個別的、集団的自衛権について、今までの政府解釈というものは、たしか集団的自衛権については、それを有しているけれども行使は憲法上できない、こういう政府解釈だと思いますけれども、その点、官房長官に確認しておきたいと思います。
○菅国務大臣
政府としては、今まではそのとおりです。
○山田(宏)委員
権利はあるけれども行使できないということはどういうことかというと、例えば、損害賠償の請求権があるけれども損害賠償を請求することは行使できない、または、表現の自由はあるけれどもそのようなさまざまなものを出版することはできない、こういうことと同じで、権利のないことと同じことですよ。
権利があるということは、行使することと一体なんですよ。ですから、権利があるけれども行使できないなんというようなばかげた解釈をやっていけば、私は、日本はどんどんどんどんこういった自衛または安全保障という面でおくれをとってくると思うんです。二年前に、アメリカのアナポリスという海軍士官学校に行ってお話を聞いたことがありました。
日本の自衛官も来ていました。その中で私が質問したのは、日米の共同訓練のときにミサイルが飛んできた、そのミサイルはアメリカの艦船を狙っている、または日本の艦船を狙っているという想定なのか、どちらの艦船を狙っているかわからないという場合もあるじゃないか、だけれども、集団的自衛権が認められないから、アメリカの艦船を狙っている場合は、日本の自衛艦は、自衛の船は、軍艦は動けない、対応ができない、こんなような想定をしているんですかと聞いたら、そんなことはあり得ないとアメリカの軍人は答えていたわけです。そうしたら、日本の海上自衛隊の武官は、間に立って、いや、いろいろ考えておりますということで、現場は大混乱ですけれども。私は、安倍内閣になって、そろそろこの問題はやはり決着をつけるべきだと思うんですけれども、一般論として、権利があるのに行使ができないなんというような権利があるんですか。
○菅国務大臣
安倍内閣として、集団的自衛権について、先般、委員も御承知だと思いますけれども、懇談会を立ち上げました。そしてこれは、前回の報告書を踏まえる中で、安全保障の変化の中で、我が国の平和と安全はどうしたら守ることができるのか、そういう議論を今始めております。
○山田(宏)委員
いや、権利があるのに行使できないという権利はあるんでしょうか、一般論で。
○菅国務大臣
一般論というよりも、今後そうしたものをこの安全保障の懇談会の中で、私たちは、議論を踏まえながら、新しい安全保障について今対応を検討しているということで御理解をいただきたいと思います。
○山田(宏)委員
内閣法制局が代々受け継いできたこの解釈と称するもの、こういうのはやはり、何というか、法律の専門家による専門家のための全く現実を無視した議論でありまして、内閣法制局は内閣の一員でしょう。そうしたら、やはり総理大臣がきちっと、常識は、権利はあるけれども行使できないなんというようなばかなことがあるか、そういうような方針できちっとこの解釈は見直すべきだということを指示すれば私は終わると思うんですよ。
こんな懇談会を再開されまして、何回こういうことをぐちぐちぐちぐちやっても、いろいろな事態があるなんて例示を、四類型とかあったけれども、四類型に当てはまらないものだって山ほどあるわけです。類型を挙げれば挙げるほど、ああ、そういう場合は認められるというような限定列挙になってしまって、そんなことをやれば、日本の防衛をする場合、適時適切な判断ができないと思うんです。
私は、もうこれはストレートに、やはり集団的自衛権を有しているということまではもう決まっています、これは。慣例でもはっきりしているわけです。ですから、有しているならば、行使は当然できる。ただし、行使をする場合は、その当時の政府によって、慎重の上、慎重に、また、国会の承認が必要な場合はきちっと国会と相談をして行使をしていくと言えば済むんですよ。
そういう懇談会を何回も何回も重ねても、私は、安倍さんらしくないと思う。だから、ここはやはりぴしっと総理の見識を示していただきたいと思っています。
○安倍内閣総理大臣
先ほど、権利があって行使できない、そんな権利なんかあるのかという御質問でございましたが、維新の会の西村悟議員は、財産は持っていてもそれを処分する能力に欠けている場合、いわゆる禁治産者と言われている場合は、それは、財産に対して権利は持っているけれども、処分することはいわば許されていないというふうに、西村悟さんが弁護士として解説をしておられて、そうすると、では、日本はそういうことなんですかということになってくるわけでありまして、しかし、それでいいということではないわけであります。
大切なことは、この集団的自衛権については、残念ながら、国民的にはまだよく理解をされていないわけでありまして、例えば、私の友人に集団的自衛権の行使について賛成してくれますかと言うと、それは反対だと言うんです。しかし、では、さっき山田委員が指摘をされたように、日本の自衛艦の艦艇とそしてアメリカの海軍の艦艇が、例えば東シナ海において日本のシーレーンを守るために並走して走っていたときに、アメリカの海軍の船がミサイル攻撃を受けて、こちら側が例えばイージス艦だった場合は、こちら側の船しかそれは感知できないということはあり得ますね。そして、その方向も、アメリカの艦艇だということは相当離れている距離であってもわかるわけです。
自分たちの艦艇ではなくて、そっちを狙っている。そして、それを撃ち落とす艦艇はアメリカの海軍の船にはなくて、こちらのイージス艦にはあるということは、現実問題としてあり得るわけですね。これを撃ち落とさなくていいんですかと言ったら、当然撃ち落とすべきでしょうと私の友人は言うんですね。それがすなわち集団的自衛権の行使ですよと言うと、ああ、それだったら行使すべきですね、こういうふうに言うわけであります。
例えばミサイル防衛においても、既にアメリカのイージス艦も、先般の北朝鮮のミサイル発射については、日本海に配備をされるわけでありますが、このイージス艦と日本のイージス艦は情報を共有するわけであります。ミサイルの航跡を追う場合は一時的にイージス機能を全部上に向けて、周りについての防備は手薄になるわけでありますが、それを例えば日本のイージス艦が機能をいわば補助する形になって、一体的にミサイル発射に備えているときに、そこに対する攻撃をこちらが探知をしたときにアメリカのイージス艦を助けないということになれば、これは日米同盟が危機的な状況になるわけでございます。
こうしたことも含めて、ですから、前回四類型において議論を重ねたわけでございますが、国民的な誤解としては、集団的自衛権の行使を権利として認めたら、それは権利として行使をしなければならないと誤解をされているわけでありますが、それは行使する権利となったとしても、あとは政策的な選択肢の中で、これはやれる、これはやれませんよということを、政策的にいわば選択肢として考えていけばいい。その政策的選択肢の中で四類型というものはどうだろうかということを考えてきたわけでございます。
世論調査においても、この四類型においては、ここで行使をするのは当然のことですねというのは、六、七割近い方々が支持をしていただいていますが、残念ながら、まだ集団的自衛権の行使そのものには実は支持が余り高まっていないという現実がございます。そういう意味においては、しっかりとまだ議論をして、国民的な議論を高めていく必要があるんだろうと思います。
ですから、まだ第一回目が終わったばかりでございますが、これから精力的に議論を進めていただきたい。今、安保法制懇で議論を進めておりますが、議論をしていただきたい、このように思っております。
○山田(宏)委員
今の総理の答弁は、やはり総理はもう集団的自衛権は当然行使できるものという前提でお話しになっていましたよ。ですから、もうそれをちゃんと、余り細かく細かく類型をつくると、こういう場合はどうなんだ、ああいう場合はどうなんだということになると余計複雑怪奇な世界に入ってしまいますから、これは当然、権利があれば行使はできる、しかし行使するかどうかは慎重の上、慎重に判断するということで、もう終わりなんです、この議論は。余り複雑にしない方が私はいいと思うんですね。
この集団的自衛権、個別的自衛権の問題は、実は人間にあらわせば正当防衛なんです。正当防衛というのは、刑法第三十六条にこう出ているわけですね。「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」こうなんですよ。国でいえば、この正当防衛がいわゆる個別的、集団的自衛権なんです。
だから、個人の場合の正当防衛は、自分に来た危害は守っていいけれども妻子や友人に危害を加えられたときは俺は知らぬよ、これはあり得ないわけですよね。それはやはり助けなきゃいかぬわけですよ、急迫不正の侵害に対しては。だから、やはりこれは当然、そういうことができる権利は人間にも自然権として認められているし、国家にも自然権として、つまり、もともと国家としてある権利として認められているから、国連憲章にもサンフランシスコ平和条約にも、全部それが書いてあるわけです。
ですから、ここは余り複雑にしない方がいい。世論への説明は必要です。しかし、やはり、どこかでこの決断を早くしていただいた方が日本の安全、日米同盟にとっても私はいいのではないか、こういうふうに考えております。
それからもう一つ、防衛費について一点だけ。
来年度の予算で防衛費の増額を図ったということで、これは大変評価をいたしております。
これまでは、防衛費は、例えばGDP一%以内というような三木内閣時代の方針みたいなものがあって、それが、踏襲はされていないけれども、事実上そのGDP一%以内という枠が一つの心理的な壁になってきたような感じがいたしております。
しかし、アメリカはGDPの四・五%、韓国は二・五%、やはりかなりのそういう努力をしているにもかかわらず、日本がこういった状況でいいのか。しかも、自分の国の安全を守るということから考えれば、このGDP一%枠なるものは当然ながら安倍内閣では存在していないと思いますし、その点について、まず一言明言をしていただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣
もちろん、安倍内閣において、一%という枠は存在をしておりません。
そもそも、三木内閣において一%という枠がつくられたわけでありますが、これは私は不適切であったと思いますね。
つまり、防衛費というのは自分の国の事情だけで決められることではなくて、防衛環境が、安全保障環境が厳しくなってくれば当然それに対応していく必要がありますし、逆であればそれに対応して減らしていくということなんだろう、このように思うわけであります。当然、財政的な制約はかかるわけでありますが、必要な防衛費というのは、機械的にGDPに結びつけて考えるのは、これは全く間違った考え方ではないかと思います。
○山田(宏)委員
全く同意です。
私の時間はあと二分ぐらいになりました。
今メモが入りまして、十一時に議運の理事会において日銀人事の提示があったという報告を受けました。
このことについては、今後国会内で議論をして、両院で議論をしていくということになるんでしょうけれども、我々日本維新の会は、過去とのしがらみがない政党であります。
今回、これを国民が見て、特に日銀の人事について取り沙汰されたり、ああだこうだと各党がいろいろなことを言っていることについて、やはり、国民から見ると、一体何がどう問題で、この人の何がどういいのかということがはっきりわからないと思うんですね。
そうすると、どこでその人たちが明示的に、きょうで内示されたわけですから名前がはっきりするわけですけれども、これまでの慣例でいきますと、議院運営委員会で幾つか質疑がある。しかも、すごく短い時間の、限られた人たちによる質問がある。それも、マスコミにはオープンにならない。また、議員の傍聴すら人数の制限がある。一般の傍聴はなおさら認められない。これっていいのかなと、国会の問題ですけれども、感じております。
アメリカなんかは、重要なそういった大統領指名の人事については、各担当の委員会で聴聞会というのが開かれて、よくテレビでやっています、いろいろな質問を国民の前で受けて、それに答えます。そういった形を通じて少しずつ、ああ、この人はこういう考え方かということを納得し、国民にも議論が湧き起こるわけです。そういう聴聞会の前には、書面でその人に対して質問をすることもできるというような機会をつくっています。
やはりもう、前もって名前が出たからどうだこうだじゃなくて、名前が出てから、きちっと国民の前で、オープンな場所でその人の考え方をもっと聞いていくという必要があるんだろう、こう思います。
これは国会内で決めることでありますけれども、長年、与党、野党の立場でこういった人事案件にかかわってこられた総理として、御所感を伺いたいと思っております。
○安倍内閣総理大臣
今、委員の質問を聞いておりまして、確かに、国民の皆さんにとって非常に注目度の高い人事、極めて重要な人事においては、そうした、山田さんが言われたような、御本人がさまざまな質問に対して答えていきながら能力を示し、考え方を示していくという考え方も一つの考え方としてあるのだろうな、私はこんなように思いました。
これは国会において、各党各会派においてよく御協議をいただきたい、このように思います。
○山田(宏)委員
以上で私の質問を終わります。
ありがとうございました。