衆議院予算委員会 経済対策・経済連携等についての集中審議 山田宏の質疑応答全文
○山田(宏)委員
日本維新の会の山田宏でございます。
きょうはTPPに関する集中審議でございますが、まず、その本題に入る前に、総理を初め皆様にお礼を申し上げたいと思っております。
それは、二月、我が党が、今回の補正予算に関して、大変大きな予算を翌年にすぐ繰り越さなきゃいけないという地方の現場の問題に対して、二月二十六日の補正予算の成立と同時に、財務省の方から指示が出まして、全地方自治体に各省庁からそういうお達しが行きました。その結果、これまでは年度を越えて大きな書類を抱えて出先機関をうろうろしなければいけなかった、その年度末の状況が一変をしまして、図表も要らない、工程表も持っていかなくていい、紙数枚でこの手続が済むという状況に対して、多くの自治体からお礼の声が上がっております。また、財務省も、どうなったかということをちゃんとサーベイしてくださっていまして、報告がありました。
こういった、時にはトップが、または内閣がトップダウンで決断をして即座に行動に移させるということを上手に加えながら、ボトムアップと一緒になってやっていくということで、やはり大きな緊張感が生まれてくる、成果が上がってくる、こういうふうに思っております。
さて、きょうはTPPでございます。今まで同僚議員がいろいろと御質問をさせていただきました。まず、我が党は、TPPの交渉にはなるべく早く参加をすべきだ、これが国益だということを主張してまいりました。今回の総理の御判断、まことに適切であり、高く評価をしたいと考えております。
とにかく、ルールづくりに早く入っていかないと、でき上がったルールをのまされるということになってしまいますから。それで、もしそのルールが我々ではのめないということであれば、調印しなきゃいいわけだし、国会が批准しなければいいわけです。今までそんなことは何度もありました。ほかの国も何回もありました。普通のことですよ。ですから、私は、交渉に参加するというのは、これはやらなきゃいけないと思っています。
かつて一年半前に、野田政権で、野田元首相にAPECの後、お会いしました。このAPECは、野田元総理がハワイでオバマ大統領にTPPへの交渉参加方針を明示したときであります。その後、野田さんがどう言っていたかというと、この交渉参加方針は、日本の国内では大変抵抗があるけれども、その方針を示した途端に、今までとまっていた日中韓のFTA交渉とかそれからASEANプラス6、これは今はRCEPというんですかね。
テレビを見ている方は、ASEANは東南アジアの方でわかると思うんですが、6というのは何なのかというと、御説明申し上げますと、日中韓とインド、オーストラリア、ニュージーランド。アメリカは入っていないですね。アメリカが入っていないEPA交渉というものが動き出したというんですね。
要は、日本がTPPに入るのか、それとも、中国も入っているからアメリカは入っていないRCEPに入るのか、こういったことがてんびんにかけられるようになった。これからは、そういうものをてんびんにかけながら、より我が国にとっていい方をとればいいんですよ。そういう交渉をやはりTPPでしていっていただきたい、こういうふうに考えております。
そこで、前置きはさておき、その中で、きょうも農業の問題がいろいろございました。守るものもあれば、攻めていくものもあります。我々日本維新の会は、攻める農業、輸出産業にしよう、こういうことを主張してまいりました。
本当にそうなるのかということでありますけれども、かつて、一九八五年ぐらいから、ニュージーランドが、国を開く、関税を撤廃する、補助金を削減する、いわゆるニュージーランド改革を行いました。農業も補助金がほとんどなくなりました。関税もほとんど下がりました。その結果、ニュージーランドの農業は壊滅したかというと、八万人の農業人口が、当初は八千人から一万人減ると言われていましたけれども、千人しか減らなかったんですよ。そして、非常にGDPもよくなってきた。
こういった状況を見ると、私たちが考える以上に、昔から農業をやっておられる方は意外と強く賢いものであります、国の柱ですから。私は、農業をそういった面で信じたらいい、こう思います。
そこで、攻めの農業に向かって、きょうは検疫の問題を取り上げてみたいと思っています。
TPPの交渉分野の一つに衛生植物検疫、SPSというのがあると聞いていますけれども、農水大臣、これはどのようなルールについて交渉されるんでしょうか、短くお願いします。
○林国務大臣
今委員が御指摘のありました植物検疫ですが、TPP交渉の中で、現在のところ、WTOのSPS協定の権利義務を強化し、発展させるということにつきまして合意があるというような情報がございますので、こういう方向で情報を収集して、対応を検討していきたいと思っております。
○山田(宏)委員
今ちょっとフリップにお示しをしているものをごらんください。また、委員の皆様には、その本体というか、たくさん書いてある、丸とか三角とかバツとか二重丸が書いてある。
これは何なのかというと、この図を見ると、日本がこれらの国に輸出する際にそれらの国でどういう検疫体制になっているかということを日本の農林省の資料から取り出したものです。
例えば、上にベトナムがありますね。ベトナムに輸出する場合は、もう全部Pと書いてある。Pというのは何なのかというと、こちらの説明だと、相手国が輸入許可証を出さないと輸出できないというものです。二重丸は、何もなくても輸出できる。丸は、日本側の輸出の検疫証が要る。それから、Pは、今申し上げたように、相手側の輸入許可証が要る。星は、もっとひどくて、日本側に来て、日本の農地の状況がどうかということをきちっと調べた上で輸入の許可を出すという厳しい条件。そして、バツは輸入を認めないというものです。
これを見てもわかるように、例えばミカン。ベトナムはPだから厳しい、タイはもっと厳しい、そしてシンガポール、マレーシアは全然オーケー、ブルネイは入れない、アメリカはとても厳しい、カナダはオーケーというような、あとずっと書いてあります。こういった条件をそれぞれ課しているわけです。
日本の農産物を輸出しようと思っても、こういった検疫の規制を何とかしていかないと、輸出をしようという意欲を持った事業者がなかなかあらわれにくいと思うんです。こういうものは、やはりどんどん変えていってもらいたい。
では、日本はどうなのかということで、アメリカと日本を比べてみます。下の中国はちょっと後で触れますけれども、次の資料ですね。
アメリカから日本に輸出する場合、日本が輸入する場合はほとんど二重丸です、こういったものは。もうどうぞという感じですね。米も二重丸。
ところが、今度は日本からアメリカに輸出する場合は、バツ、バツ、入れちゃいけませんよと。星というのはもう厳しい。そして、やっと米になって、日本からの米はオーケーよ、こういうふうになっているわけです。こんな不平等なことになっているわけです。
ですから、やはりこういったものは、日本の強みを生かして、ぜひ交渉の中で強力に、この検疫の問題は日本と同様にオープンにしてもらうように努力してもらいたいと思いますが、農水大臣、どうですか。
○林国務大臣
山田委員おっしゃるように、輸出を今からふやしていくというところからしますと、大変大事なところであります。
全部並べて同じことにするというわけになかなかいかないのはもう御存じのとおりでございますが、もともと植物検疫がなぜあるかというと、病害虫等から自国の農業を守るために各国が科学的知見でやっている。これを先ほどのSPS協定で、どこまでが科学的知見で、どこまでそろえていくかということを一生懸命やっておるわけですが、各国に必要な検疫措置は当然のことながら許されておるわけでございます。
その上で、今出していただいた、日本から米国というものでございますが、例えば、カキはバツがついておりますけれども、今交渉中でございます。それから、ニホンナシですが、モモシンクイガというようなものがあったり、ミカンについては、かんきつの潰瘍病というのがあったり、向こうにいろいろな懸念があるということでございます。
ですから、当局の尻をたたいてどんどんどんどんやらせたい、こういうふうに思いますので、これを出したいというものが、要請が強い順にしっかりと対応してまいりたい、こういうふうに思います。
○山田(宏)委員
先日、政府から、TPP交渉参加における経済の効果について発表がありました。農業はたしか三兆円ぐらいのマイナス、こういうふうな報道でございました。
GDPで、全体としては三・二兆円の増加、こういう内容でございましたが、この中には農産物の輸出というものがどれぐらい含まれているんでしょうか。
○林国務大臣
農産物の生産が関税を即時撤廃した場合どれだけ減るかというのを農水省で計算して、それは三・〇兆円ということで出しております。
ここから先は、内閣官房の方でやられたGTAPモデルということですので、必ずしも私のところではございませんが、関税が全部ゼロになった場合に、トータルで、モデルを回してどうなるかということをやっておられますので、その中に、それほど量的にはないかもしれませんけれども、一般的な輸出の中に農産物というのはあるのかなというふうに思っておりますが、我が省としては国内の生産がどれだけ減るかというのを試算しております。
○山田(宏)委員
やはりその試算、今の段階ではやむを得ないとしても、私は、農業の輸出というものをもっと国策に入れていくべきだと考えております。
次の資料、農林水産物の主な輸出相手国・地域というものを毎年農林水産省が発表しております。
これは二〇一一年です。何と、農林水産物で一番多く日本が輸出している先は香港なんですね。こう言っては悪いですけれども、大きい国じゃありませんよね。でかい消費地があるわけでもないですね。香港が一番ですよ。二番が米国、三番が台湾、韓国、中国と続くわけです。香港が何と二五%も占めているんですよ。
これは何とかしなきゃいけませんよ。もっともっと、日本のおいしい安全な農産物をどんどん世界に供給する、そういう余地がまだまだあるんじゃありませんか、農水大臣。
○林国務大臣
これは、先生御指摘のように、現段階での輸出先はアジアが中心となっている、一位は香港である、香港も大きな市場である、こういうふうには思っておりますけれども、まさに全世界といって地図を見て、そして、A・T・カーニーだったと思いますけれども、これから農産品それから食料全体のマーケットはどうなるのかという試算もあります。倍以上になっていくという試算もあるわけでございますから、その中で、我々が今からどこを狙っていくのかということになりますと、ここに、今一位から五位に入っている国にとどまらずに、大きく輸出は伸ばしていかなければならないし、その可能性は持っておるというふうに考えております。
○山田(宏)委員
前向きな御答弁をいただきましたけれども、ぜひ農水大臣、日本がこういった、一位が香港で悪いと言っているわけじゃないですよ、もっとでかい消費地があるのに、こんな状況であるということに甘んじることなく、今お話のあったように、日本の農産物の輸出戦略をつくって出してくださいよ。それがやはりTPPというものに対して我々が望む一つの答えですよ。
守るばかりじゃだめですよ。いいディフェンスというのは、いいオフェンスなんです。守ろうと思えば、攻めなきゃ。ぜひお願いします。どうですか。
○林国務大臣
御一緒に勉強させていただいた中国の古典の中にも、孫子の兵法というのがございました。敵を知りおのれを知れば百戦危うからずということでございますし、今先生からお話がありましたように、攻撃こそ最大の防御だということで、我々が一体どういう強みを持っているのかということをもう一度きちっと踏まえた上で、そして、今の検疫のお話がありましたが、どういうところがボトルネックになっているのか、こういうことをきちっとやっていく必要があると思っております。
一月に設置しました農水省の本部、私は本部長ですけれども、制度見直し検討委員会、それからもう一つは戦略的対応推進委員会、二つのチームを設けて、品目別にどういうことができるのかということを検討して戦略をつくっておりますので、ぜひ委員の叱咤激励に応えて、頑張ってまいりたいと思っております。
○山田(宏)委員
ちょっとこの辺は、総理にも御決意をお聞きしておきたいと思うんです。
今、こんなような農産物の輸出の現状を変えていく、TPPは大事なきっかけになると考えておりまして、やはりこの程度じゃなくて、もう五倍とか十倍とか、何年かかけてそこまでやるぞ、日本は農産物の輸出国になるんだ、そういうような戦略と計画、そういったものをお立てになったらどうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○安倍内閣総理大臣
私は、大変いい表をつくっていただいたというふうに思います。まだまだ我々の努力によって、農業の分野において新しい地平が開かれてくるんだということが明らかになっている、このように思うわけであります。
第一次安倍政権のときに、一兆円という目標を立てました。今五千億円ぐらいになっているんだろうと思うわけでありますが、その中で、純粋に農作物はまだ数百億円にしかなっていないという問題もあります。
ただ、こういう形で、我々は、さらに開放経済を進めていく中においても、十分に開放経済の果実を農業分野においても得ることができるということを明らかにしながら、同時に、農家の方々は極めて真面目にいいものをつくっているんですが、それを売る努力をする、農協も含めて、もっともっと努力をしなければいけない、このように感じたような次第でございます。
○山田(宏)委員
きょうの新聞の世論調査によりますと、七〇%前後の人が今回の総理のTPP交渉参加の決断に賛意を示しているわけです。私は、そういった大きな支持率をバックに、今度はさらに厳しいことも乗り越えていかなければいけない、こういうふうに思っております。
きょうは、いろいろと農業についての御質問がありました。その内容、お考えはわかります。それも一つの理だと思います。
ただ、私は一つの事例を示したいと思うんですけれども、実は、私は一九九五年にニュージーランドへ行きました。ニュージーランドがやった厳しい改革の現場はどうなっているか、見に行きました。
その結果、農業についても、現場に行って、農業の関税がほとんどゼロになって、補助金がほとんどゼロになったというニュージーランドがどうなったかといいますと、今のニュージーランドを見てもわかるように、私は農業者の言葉を聞きましたけれども、今まではどうやったら補助金をうまくもらえるかということばかりを農業者で考えていた、ところが、関税が下がって補助金がなくなってくると、世界のマーケットがどういうふうに動くのかということを農業者も考えるようになった。
こういうふうに意識転換を図らないと、日本の農業は、ただ関税がある、ただ補助金を出す、これではだめなのは今までが示しているんですよ。
だから、今の農業の、農産物の関税も一%たりとも下げないなんて、こんなのはばかげている。
それでは強くならない。むしろ、関税も、それから補助金も、上手な戦略を持って、輸出産業にするんだという決意を持って臨んでいけば、農業者というのは、今までも歴史的にずっと賢く強いんです、国の柱なんです、必ず乗り切っていける、ニュージーランドも乗り切っているわけですから、私はできると思うんですね。
ぜひそういう決意で臨んでいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○安倍内閣総理大臣
もちろん、日本の農業には多面的な価値がございますが、しかし、いわば物をつくっていく、生産という分野においても、もっともっと可能性を持たせていくことが求められているんだろうな、このように思うわけでございます。ここで大切なことは、農業における日本のよさ、特性を生かした戦略をつくっていくことだろう、このように思います。
今回のTPP交渉参加、これを機会に、しっかり内閣を挙げて強い農業をつくっていく、そして農家の収入もふえていくし、若い皆さんが農業に参入していく、そういう分野にしていくために全面的に力を結集していきたい、こう決意をいたしております。
○山田(宏)委員
それでは、ちょっとテーマをかえまして、私たちは、今回、TPP交渉参加についても、反対論の一つは、日本にそんな強い交渉力はないだろう、交渉をすればアメリカに負けちゃうんじゃないのという気持ちがあったと思うんです。
確かに、日本は勝った場合もありますけれども、一番鮮明なのは、大東亜戦争へ入っていく前の日米交渉ですね。やはり、それが余りうまくいかなかった。その結果、不幸な戦争に突入させられてしまった。こういうような状況というのは、二度と我々はもたらしてはならない。交渉というのはそれぐらい大事だ。
昔だったら、野蛮な時代であれば、暴力を、戦争を通じて物事を解決するということがありました。しかし、だんだんだんだん、今はこういう時代ですから、やはり通商交渉というのは、かつてでいえば戦をするのと同じですよ。それぐらいの交渉体制を整える、戦に勝つという交渉体制にしてほしいと思っています。
今回、甘利大臣がTPP担当相となられました。
そして、きょう、テレビで聞きますと、事務方の首席交渉官というものを設置するという報道がなされています。どういう体制で今後このTPP交渉に当たるか、まず簡単に御説明いただきたいと思います。
○甘利国務大臣
総理が交渉参加声明をされると同時に、主要閣僚会議が設置をされました。私や官房長官、そして経産大臣、外務大臣、農水大臣、そして、必要に応じてそれに関係大臣が加わるという体制ができました。
そのもとに事務局体制を今編成中でございます。
各部署に、もちろん交渉部署が分かれていますから、それのえり抜きを選定しようというふうに思っております。最強のチーム安倍政権という交渉チームをつくって、しっかり国益を踏まえて交渉していきたいというふうに思っております。今、人選中でございます。
○山田(宏)委員
本日、甘利大臣は、かつて経産大臣のときに何度かWTOの厳しい交渉の場にいらしたお話がありました。
日本の場合、関係閣僚会議といっても、例えば今のお話だと、官房長官、外務大臣、経産大臣、農林大臣、そしてTPP担当、五人も六人も各大臣がいて、それが交渉の一つのチームになるわけですけれども、WTOの交渉でも、行かれたらおわかりになるように、最後は一人がやるんですよね。向こうは、アメリカはUSTR代表が来るわけです。ヨーロッパは貿易総局員というのが一人来るわけです。ほかの国はみんな代表は一人なんですよ。
日本は、その代表というのは、TPPの場合、甘利大臣ですよね。
○甘利国務大臣
済みません、先ほど、外務大臣と、それから財務大臣が御指摘のとおり抜けておりました。外務大臣、財務大臣、それから経産、農水等、こう入ってくるわけであります。
私は関係省庁を取りまとめる事務局役をさせていただきます。日ごろの交渉レベルは、首席交渉官といいますか、事務レベルのトップが交渉をしていきます。閣僚級ということになりましたら、私や、あるいは、場合によっては関係大臣が出ていくかというふうに思っております。
WTO交渉の場合は、私と当時は農水大臣が二人、出席をいたしました。各国ともに、一人で出てきているものと、それから複数で出てきている国がございました。それぞれ、私の場合は経産大臣として攻める役をやり、守る役は当時の農水大臣がやったということを思い起こします。
いずれにいたしましても、最強のチームを組んで最強の交渉をしたいというふうに思っております。
○山田(宏)委員
TPP担当相が取りまとめ役ではだめなんですよ、向こうは全権委任ですから。
カークUSTR代表、アメリカの代表は、これは全権大使なんです。つまり大統領のかわり。日本の場合は取りまとめの大臣。取りまとめだから所管以外は判断できないから、出られたときに、ちょっと待ってと言って、ちょっと本国に聞いてみますとか関係大臣と相談しますとなっちゃうんですよ。これがいかに日本の交渉力を戦前も戦後も弱めてきたかということなんですね。
ここは甘利大臣のせいじゃないですよ。これから、まさに戦とも言われる通商交渉に臨んでいくに当たって、関係閣僚会議ではだめです。やはり、総理にかわるTPP交渉大臣が、最後は事務的に詰め切れないところを自分が責任を持って判断し、責任をとる、こういうぐあいになっていないと、私は、対外交渉には最後、なりにくいのではないかというふうに考えております。
その点、総理、いかがでございますか。
○安倍内閣総理大臣
確かに、委員の御指摘の側面もあるんだろう、このように思います。
今まで、参加表明に向けて議論をする中においては、関係大臣が官房長官を中心に集まって議論を重ねてまいりました。そして、私が表明するに当たって、担当大臣ということで甘利大臣にお願いをしたところでございますが、交渉においては、事務方では首席交渉官を決めるということにいたしました。
同時に、政治レベルにおいてどういう体制をとっていくかということについては、外国の状況等も勘案しながら判断をしていきたいと思っております。
○山田(宏)委員
かつてWTOの交渉に入っていた事務レベルの方から聞いたんですけれども、ある会議ではある日本の代表が答えたんですけれども、自分の省庁にかかわらないところもあるなということでちょっとこれは待てよと、コーヒーブレークを要求して、コーヒーブレークの後、また相談をして会議に戻る。そうすると、戻ってみたらまた答えが、いや、いろいろ相談してみたけれども、さっきはAと言ったけれどもBだった、Bにします、こう言ったら、他国の交渉員から、一体日本はAなのかBなのかどっちなんだと。こういったケースは多分、多々いろいろなところで今まで日本の代表者がやはり経験してきたことではないかというふうに思うんです。
かつての日本国も、戦争前、首相もいて、海軍大臣、陸軍大臣、外務大臣、何とか大臣ともうばらばら。結局、交渉力が弱くなって敗退した。今度は、総力を挙げるんだったら、やはり交渉の責任者は一人、そして、その人に総理がお任せになるという体制を何としてもつくってほしいと思います。
民主党も、かつて国家戦略室というのをつくったんです。同じような発想だったと思う。国家戦略担当の大臣を置いて国家戦略会議をやって、各関係大臣がいた。そのもとに、各省庁からえりすぐりを集めて事務局の会議をつくった。同じ構造なんです。でも、機能しなかったでしょう。機能しなかったね、余り。
それはなぜかというと、民主党が悪いと言っているんじゃないですよ。そういう体制がいけない。
そういう体制はなぜ悪いかというと、事務局の人の各省庁から入ってくる人たちは、一年ぐらいで省庁に帰っていく人もいるわけです。そうすると、どうせ俺は一年したら帰るかもしれないと思ったら、本国の方ばかり向いて仕事するんですよ。また、交渉しているとすれば、ずっと交渉の経緯を知っている人がいなくなってくるんです。
その事務局の会議、今度つくられます、えりすぐりの最強のチーム。そこの役人、各省庁から来るえりすぐりの人たち、三年間帰しちゃだめですよ。どうですか、甘利大臣。
○甘利国務大臣
私がWTO交渉あるいは二国間の通商交渉をした経験でいいますと、主みたいな人が必ずいるんですね。大体、外国は、大臣自身がその交渉の主みたいな者がいまして、そことどうやって力勝負をして負けないかということが大事なんでありますけれども、事務方にも、何十年前の交渉から全部頭に入っている連中がいます。
そういうのを相手に交渉していくわけでありますから、にわか仕立ての知識ではだめということは、よく経験上承知をいたしております。
それと、私がWTO交渉をやった経験からいいますと、二人、農水大臣と出ていましたけれども、役割分担をしました。私は、こっちが守るためにはこっちが相当攻めていかなきゃならないということで、攻める方と受ける方と役割分担をして、そして妥協をかち取るという戦術も使いましたから、複数いればいるで、それはやり方次第だというふうに私は思っています。
ただ、委員おっしゃるように、事務方は相当、尋ねられたなら何年前のことでもこう答えられるというか、このことに関してあそこの国はどう思っているということもすぐ答えられる、そういう点は非常に大事です。それは、交渉責任者が瞬時の判断をするときの知識として求めたときにすぐ返ってくるということはとても大事だということは、経験上承知をいたしております。
(山田(宏)委員「三年間」と呼ぶ)交渉にたえるような、しっかりとした長期の任期にしたいと思っております。
○山田(宏)委員
急に言われてもお答えになれないと思いますけれども、最低三年ですよ。一年ではもう全然だめ。
それからもう一つ、役人ばかりじゃだめです、民間の人も入れる。そして、商社マンでも交渉力のすぐれた人、日本はいっぱいですよ。むしろ官庁の役人の方がだめ。だから、そういう人たちもチームに入れてください。どうですか。
○甘利国務大臣
適切な人材があればいろいろと考慮したいと思っております。
○山田(宏)委員
時間が来ましたので、最後までできませんでしたけれども、これから交渉がどんどん進んでいきます。ぜひ、打って一丸となる体制をつくっていただきたいと申し上げて、終わります。
以上です。